2011年3月の東京電力福島第一原発事故から10年を迎える中、菅政権は4月13日にも、福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出による処分を行うことが報道された。
海洋放出に対しては、4月6日に菅首相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は、「反対の考えはいささかも変わらない」と述べ、さらに福島県内の45市町村(県内市町村の約7割)が反対の意思を表示、あるいは慎重な対応を求めており、昨年10月には、茨城県内10漁協で構成する「茨城沿海地区漁業協同組合連合会」も、最大の懸念が水産物への風評被害だとして、経済産業省の有識者委員会が「処理水を薄めて海に流すのが最も現実的と示唆する案」を打ち出すと、連合会は強く反発の声を上げてきている。それは、「(原発事故後)10年近くかけて努力してきたものが、振り出しに戻ってしまわないか」という危機感を持った訴えであった。
政府はこれまで、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行いません」と約束してきたにもかかわらず、その約束を守らないことは絶対に許すことができない。
一度、海洋放出を始めてしまえば、海洋投棄は数十年先まで長期に続けられることを認めていくことになる。すでに多くの漁業者からの反対の声にあるように、宝の海を汚染された海にされれば、沿岸漁業が壊滅的な打撃を受けることは確実である。さらに、漁業のみならず、農業や観光業にもマイナスの影響を与えることも懸念される。
汚染水にはトリチウム以外にもさまざまな放射性物質が含まれているのであり、これらの放射性物質が海に流されれば、環境蓄積、生体濃縮などが起こること。さらに放射性物質を人間の体内に取り込めば、内部被ばくも懸念されるということもある。「放射性物質は海で拡散し、薄めれば安心だ」というものではないし、私たちは海洋放出に断固として反対である。
4月10日の報道によれば、大井川和彦茨城県知事は、「これから政府の方針が決まることなので、しっかり注視していきたい」と述べたという。知事は、海洋放出に対して初めのうちは「容認できない」と表明し、白紙撤回を求めていたが、「注視していきたい」では事実上容認の考え方に転換したことになる。これは、「宝の海を汚すな」という思いで、海を愛し、くらしを営んできた漁民への裏切り行為であり、許されることではない。
以上のことから、社民党茨城県連合は、放射能汚染水の海洋放出に断固反対の意思を表明するとともに、これからも汚染水の海洋放出に反対する人々と共に闘うことを表明する。
2021年4月12日
社民党茨城県連合
代表 井坂 章